コラム

会議・メール・承認フローはVSMでどう見えるか

2026/09/10

社会や現場の「あるある」課題

「会議が多いのに、なぜか決まらない」
「メールのやり取りは増えているのに、前に進んでいる感じがしない」
「承認フローはあるのに、毎回どこかで止まる」

ホワイトカラーの現場で、
多くの人が“仕事そのもの”以上に時間を使っているのが、
会議・メール・承認です。

そして厄介なのは、
これらが“業務を進めるために必要な活動”として認識されていることです。

もちろん、会議もメールも承認も必要です。
しかし、それらが増えれば増えるほど、
仕事が前に進むとは限りません。

むしろ現場では、

  • 会議で論点が整理されず、宿題だけ増える
  • メールが往復するうちに、誰が何をするか曖昧になる
  • 承認が多段階化し、判断が遅くなる
  • 「念のため」の共有が増え、責任の所在がぼやける

といったことが起こりがちです。

TPSの視点で見ると、
ここには“見えにくいムダ”が大量に潜んでいます。

では、こうしたホワイトカラー特有の活動を、
VSM(ものと情報の流れ線図)でどう捉えればよいのでしょうか。

ポイントは、


会議・メール・承認を「単なるコミュニケーション」ではなく、
価値の流れを左右する工程として見ること

です。

会議・メール・承認は、“仕事そのもの”ではなく“流れをつなぐ工程”

ホワイトカラーの仕事では、
会議・メール・承認はしばしば主役のように扱われます。

しかしVSMの視点では、
これらは本来、
**価値を生む仕事を前に進めるための“つなぎ”**です。

たとえば、提案書づくりで本当に価値を生むのは、

  • 顧客課題を捉える
  • 仮説を立てる
  • 提案内容を練る
  • 相手に伝わる形にまとめる

といった活動です。

その一方で、

  • 会議で方向性を確認する
  • メールで情報をやり取りする
  • 上司の承認を取る

これらは、
本来は“必要最小限でよい支援活動”のはずです。

ところが現場では、
この支援活動が肥大化し、
価値を生む時間より、つなぎの時間のほうが長くなることがあります。

VSMで見ると、
ここが非常によく見えてきます。

会議は「意思決定の工程」か、「滞留の温床」か

会議をVSMで見るとき、
大切なのは
「この会議は何を前に進めるために存在しているか」
を明確にすることです。

よくあるのは、次のような会議です。

  • 情報共有だけで終わる
  • 論点が整理されていない
  • 結論が出ず、「持ち帰り」になる
  • 宿題が出るが、担当・期限・完了条件が曖昧
  • 次回会議まで案件が寝る

この場合、会議は“工程”として機能していません。
むしろ、
仕事を止める一時保管場所になっています。

VSMで描くときは、
会議を単に「会議」と置くのではなく、

  • 何の判断をする会議か
  • 入力情報は何か
  • 出力(決定事項)は何か
  • 決まらなかった場合、どこへ戻るか
  • 次工程に何が渡るか

まで見ます。

ここが曖昧なら、
その会議はムダを生みやすい。

TPSの視点では、
会議もまた“流れを乱す工程”になり得るのです。

メールは「伝達手段」ではなく「滞留場所」にもなる

メールも同様です。

多くの職場では、
メールは単なる連絡手段として扱われています。
しかしVSMで見ると、
メールはしばしば
“情報の搬送”と“情報の滞留”を同時に起こす場所です。

たとえば、

  • CCが多く、誰が主担当か不明
  • 件名から優先度が分からない
  • 本文が長く、依頼事項が埋もれる
  • 添付資料が複数あり、最新版が分からない
  • 返信待ちのまま、案件が止まる

これは、製造現場でいえば、
「部品は運ばれているが、置き場が分からず積み上がっている」
のに近い状態です。

VSMでは、メールを
“送った・受けた”だけで終わらせず、

  • 誰に何を依頼しているか
  • 返信がないと次工程が止まるか
  • 返信に必要な情報が揃っているか
  • 誰が判断責任を持つか

まで見ていきます。

すると、
「メールが多い」のではなく、
“メールの中で仕事が止まっている”
ことが見えてきます。

承認フローは、「統制」か「多重チェック」か

承認は、組織にとって必要です。
特に品質、リスク、法令、予算に関わる業務では欠かせません。

しかし、承認フローは放っておくと、
非常に簡単にムダを増やします。

たとえば、

  • 誰が何を確認するのか役割が重複している
  • 上司・部門長・管理部門・役員が同じ観点で見ている
  • 承認のための資料が毎回ゼロから作られる
  • 承認者ごとに期待する粒度が違う
  • “承認”なのか“相談”なのかが曖昧

この状態では、
承認は統制ではなく、
多重な確認作業の連続になります。

VSMで見るときは、

  • どの承認が本当に必要か
  • 各承認者の役割は何か
  • どの情報が揃えば通るのか
  • どこで差し戻しが起きやすいか
  • 承認の前後で何日止まるか

を見ます。

ここでよく見つかるのは、
「承認そのものが多い」のではなく、
承認の設計が曖昧だという問題です。

会議・メール・承認をVSMで見るときの3つの観点

ホワイトカラーでこの3つを扱うとき、
次の3点が特に有効です。

  1. 入力と出力を定義する
  • この会議に何を持ち込むのか
  • このメールで何を依頼するのか
  • この承認で何が決まれば次に進めるのか

これが曖昧だと、必ず滞留します。

  1. “止まる条件”を見つける
  • 何がないと会議で決まらないか
  • どんなメールだと返信が遅れるか
  • どんな状態だと承認が保留になるか

TPSでは、止まる理由こそ改善の宝です。

  1. 次工程に渡る“価値”を見る
  • 会議後に何が明確になったか
  • メール後に何が進んだか
  • 承認後にどの判断が確定したか

ここが曖昧なら、
その活動は「やっている感」はあっても、
価値の流れに貢献していない可能性があります。

ケース紹介:企画会議が“進まない会議”になっていた

ある企業の企画部門では、
新サービスの検討会議が毎週行われていました。

参加者は多く、議論も活発。
しかし、担当者たちは
「毎週集まっているのに、なかなか前に進まない」
と感じていました。

そこで、企画テーマを“もの”として、
会議・メール・承認を含めたVSMを描いてみました。

流れ

  1. 担当者が論点整理
  2. 週次会議で議論
  3. 宿題発生
  4. メールで追加確認
  5. 次回会議で再議論
  6. 部長レビュー
  7. 修正
  8. 再度会議
  9. 役員報告

見えてきたのは、次のような構造でした。

  • 会議の目的が「判断」ではなく「議論」に寄りすぎていた
  • 宿題の担当・期限・完了条件が曖昧で、次回までに揃わない
  • メールで補足しているが、論点が分散して履歴が追いにくい
  • 部長レビューの観点が毎回変わり、修正が繰り返される
  • 役員報告前に「何を決めてほしいか」が整理されていない

つまり、問題は
「会議が多い」ことではなく、
会議・メール・承認が、流れとして設計されていないことでした。

このケースでは、

  • 会議ごとに「決めること」を1〜2点に絞る
  • 宿題に担当・期限・完了条件をセットで付ける
  • メールではなく共通管理表で論点を一元管理する
  • 部長レビューの観点を標準化する
  • 役員報告は「判断してほしい論点」を冒頭に明示する

といった改善を行い、
企画のリードタイムが短縮されました。

ここで効いたのは、
会議の回数を減らすことそのものではありません。
会議・メール・承認を“流れの工程”として見直したことです。

まとめ

  • 会議・メール・承認は、ホワイトカラー業務における重要な“流れの工程”である
  • ただし本来は、価値を生む仕事を前に進めるための支援活動であり、肥大化するとムダになる
  • 会議は「意思決定の工程」として、入力・出力・未決時の戻り先まで見る
  • メールは「連絡手段」ではなく、「情報の滞留場所」になっていないかを見る
  • 承認は「統制」ではなく「多重チェック」になっていないかを確認する
  • VSMで見ると、会議・メール・承認の“量”より、“流れとしての設計不良”が問題であることが多い

ホワイトカラーの現場では、
「仕事を進めるための活動」が、
いつの間にか「仕事を止める活動」に変わることがあります。

会議、メール、承認。
どれも必要です。
しかし必要だからこそ、
流れの中でどう機能しているかを見直す必要があります。

VSMは、そのための強力なレンズです。

ホワイトカラー向けのTPS講座(21/50)

次回予告

VSMで見える“仕事しているのに進まない”の正体

 

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